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どんな症状がでれば大腸憩室炎を疑うの?
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大腸憩室炎はどんな治療をするの?
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大腸憩室炎を予防することはできるのかな
このような疑問にお答えする記事を書きました。
今回、大腸憩室炎の原因や症状、治療、予防について説明します。
大腸憩室とは
大腸憩室は腸の壁の一部が外側に突出し、袋状になった状態です。
食道、胃、十二指腸、小腸、大腸のいずれにもできます。
そのうち大腸が最も発生頻度が高く、臨床的に問題となるのは、主に大腸憩室です。
大腸憩室はアジアでは主に右側の上行結腸に多いとされていましたが、
近年は右側の上行結腸だけでなくS状結腸にも多く見られます。
食の欧米化が関係しているのではないかといわれています。
大腸憩室の発生率
日本人のおよそ25%の方に大腸憩室があるとされています。
そのうち患者の約4%が憩室炎を発症します。
日本人のおよそ1%程度の方が大腸憩室炎を経験します。
入院時の平均年齢は63歳です。
赤身肉を多く摂取するとリスクが上昇します。
食物繊維を多く摂取すること、積極的な運動を行うことでリスクが減少します。
大腸憩室炎の症状
大腸の憩室の中で細菌が増殖して、炎症を起こした状態です。
炎症を起こした部位の腹痛や発熱、下痢などが主な症状です。
炎症を起こした部位に一致した腹痛が起こります。
S状結腸の場合には左下腹部痛、上行結腸の場合には右下腹部痛がおこります。
右下腹部痛の場合は、急性虫垂炎との鑑別が必要になります。
大腸憩室炎の危険因子
大腸憩室炎の根本的な原因は不明です。
高齢、男性、喫煙、BMIの上昇が危険因子とされています。
大腸憩室炎の診断
大腸憩室炎は通常、腹痛や発熱、採血での白血球やCRPの上昇から疑います。
確定の診断は、腹部CT検査によって行います。
膿瘍などの合併症の診断するためCT検査は必要な検査です。
穿孔、閉塞、膿瘍、または瘻孔形成などの合併症がない急性の憩室炎は、
ほとんどの患者(70〜100%)は手術なしで治療が可能です。
合併症を伴う憩室炎は入院や場合によっては手術が必要となります。
大腸憩室炎の治療
入院治療の基準—急性憩室炎の患者は、次の場合に入院治療を受ける必要があります
- 穿孔、膿瘍、閉塞、または瘻孔を伴う複雑な憩室炎の場合
- 合併症のない憩室炎で、以下の特徴がある方
- 敗血症または全身性炎症反応症候群(SIRS):温度>38または<36°C、心拍数>90拍/分(bpm)、呼吸数>毎分20呼吸(rpm)、白血球数>12,000 / mLまたは<4000 / mL、CRP>15 mg / dL。
- 重度の腹痛またはびまん性腹膜炎、痛みがかなりつよい
- 微小穿孔
- 70歳以上
- 重大な併存疾患
- 免疫抑制
- 腸閉塞またはイレウス
外来での治療
入院の基準を満たさない大腸憩室炎は外来で治療を行うことも可能です。
外来治療は、典型的には、抗生物質での治療と、腸の安静、鎮痛薬による疼痛管理を行います。
基本的に内服の抗生剤での治療になります。
概ね治療開始からおよそ3日程度で評価を行います。
3日後に痛みや発熱などの臨床症状、
採血での白血球やCRPなどいわゆる炎症の値が改善していれば、
治療継続することで治癒が期待できます。
経口抗生物質
抗生物質は、憩室炎治療の基礎でした。
実は、質の高いエビデンスではなく、主に後ろ向き研究と臨床経験に基づいていました。
合併症のない憩室炎の患者480人を対象とした非盲検ランダム化試験では、
抗生物質の有無にかかわらず、入院率に変わりなかったと報告があります。
抗生物質は使用しなくてもよい可能性があります。
ただ習慣的に使ってきたこともあり、通常抗生剤を投与します。
食事—食事制限のエビデンスはありません。
ただ、症状がある程度改善するまでは流動食や、刺激物をさけた食事にすることが多いです。
入院治療
急性憩室炎の入院治療は、患者が複雑な併存疾患を持っているか、複雑性の憩室炎を持っているかによって異なります。
入院の患者は、抗生剤の点滴治療、水分、および鎮痛剤による憩室炎の治療を受けます。
合併症の治療
穿孔
横隔膜の下の自由な空気がある方です。
結腸の大きな穿孔は、糞便および細菌生物の腹腔内拡散によるびまん性腹膜炎を引き起こします。
明らかな穿孔を呈する急性憩室炎は生命を脅かすものであり、緊急手術が必要になります。
微小穿孔
腹部CTで少量の気泡が存在するが、結腸の外側に空気がないことです。
合併症のない憩室炎の患者と同様の方法で、まずは抗生物質の静脈内投与で治療されます。
大多数(94%)は侵襲的な処置をせずに管理できますが、場合によっては手術が必要になります。
膿瘍
炎症だけでなく膿がたまった状態です。膿瘍は、複雑な急性憩室炎の患者の16〜40%に発生します。
まずは抗生物質での治療を行うことが多いです。
膿瘍が4cm以上、抗生物質療法で解消しない膿瘍、
または臨床的な症状が悪化した場合、経皮的ドレナージを追加することがあります。
閉塞
憩室炎による結腸閉塞が疑われる患者では、
急性憩室炎と結腸癌の鑑別が困難な場合があります。
外科的切除が、腸閉塞を緩和し、癌を除外するために必要となることがあります。
瘻孔
瘻孔とは、結腸と膀胱、膣、子宮、他の腸管や腹壁の間に穴が開いてつながってしまった状態です。憩室瘻が自然に閉じることはめったになく、影響を受けた腸の切除が一般的に必要です。
抗生物質の静脈内投与
入院が必要な患者は、グラム陰性桿菌および嫌気性生物に対する活性を伴う
抗生物質の静脈内投与を行います。
静脈内抗生物質は、腹痛と圧痛が改善するまで継続します。
通常10〜14日かかります。
その後、経口抗生物質に移行します。
静脈内輸液
急性憩室炎のために入院した患者は、腸の安静のため
まずは絶食の上静脈内輸液を投与する必要があります。
静脈内輸液は通常、ある程度食事摂取ができるまで行います。
疼痛管理—限局性腹膜炎による激しい腹痛を抱えることがよくあります。
絶食の方は、点滴での鎮痛剤が、経口で食事を摂取していれば内服の鎮痛剤を使用します。
入院食—入院が必要な患者は、最初は静脈内水分補給で完全な腸安静に保つ必要があります。
通常、2〜3日以内に改善傾向となります。その後流動食を開始し、徐々に通常の食事に変更します。
退院の基準
経口摂取が可能で、バイタルサインが落ち着いていること、痛みがコントロールされ、
炎症の数値も改善傾向であれば内服の抗生剤を継続し退院となります。
大腸内視鏡検査
約6〜8週間で、すべての症状が解消した急性憩室炎の患者は、
前年以内に結腸内視鏡検査を受けていない場合、
結腸癌を除外するために結腸内視鏡検査を受ける必要があります。
大腸内視鏡検査による癌の検出率は、
合併症のない憩室炎よりも複雑な憩室炎の方がはるかに高いとされています。
8つのメタアナリシスでは、結腸直腸癌は、
複雑な憩室炎の患者の3〜8%で検出されましたが、
合併症のない憩室炎の患者の5.0〜7.6%でのみでした。
米国、欧州のガイドラインでも憩室炎のあとに大腸内視鏡検査が推奨されています。
大腸憩室炎の予防
食事の変更とサプリメント
健康的なライフスタイル –禁煙、身体活動、体重減少、肉の摂取量の減少が望ましいとされています。
憩室炎の急性期が解消したら、高繊維食(食物繊維を積極的にとること)が推奨されています。
これは、長期の繊維補給が憩室炎の再発率を低下させる可能性を示唆した観察研究に基づいています。
健康的なライフスタイルは憩室炎の最初の発症を予防することが示されています。
大腸憩室炎の再発—最初の発作の非手術的管理に続いて、患者の1/3が再発、その1/3が2回目の再発をおこします。
2/3の方は再発しないということです。
頻繁に再発を繰り返す場合にはまれに手術を行うことがあります。
まとめ
大腸憩室炎は、腹痛や発熱症状から発症します。
大腸憩室自体は4人に1人程度がありますが、症状は起こすことは少ないです。
採血や確定の診断にはCT検査が必要です。
長期に放置すると膿瘍や他の合併症によって長期に入院が必要となる場合があります。
気になる症状があれば早めに医療機関を受診してください。
院長 中谷行宏
私は内視鏡専門医として月200件以上の胃カメラ、大腸カメラ検査を行っています。
消化器病専門医としてお腹の症状の方の診察を行っております。