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食道アカラシアの症状と治療について

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  • 寝ているときに食べ物や液体が戻ってくる

  • 逆流性食道炎と言われて薬をのんでいるがよくならない

 

このような症状は、実は食道アカラシアの可能性があります。

食道アカラシアって聞いたこともない方が多いと思います。

今回食道アカラシアの症状や治療について解説する記事を書きました。

 

 

院長中谷 行宏

私は、消化器病専門医、内視鏡専門医として診療を行っています。

月200件以上の胃カメラ、大腸カメラ検査を行っています。

 

 

食道アカラシアとは

 

 

 

食道アカラシアは「下部食道括約筋の弛緩不全と

食道体部の蠕動運動の障害を認める原因不明の食道運動機能障害」

と定義されています。

 

どういうことかわかりにくいですね。

食道の胃の間を開く筋肉がゆるまなくなって、食道の動きが悪くなった状態です。

 

アカラシアの発生頻度は10万人に1人とされ、

消化器内科医でも出会うことが少ない疾患です。

 

しかし、正しく診断されていない方が多いのか、

筆者は年2,3人は専門病院へ紹介し、食道アカラシアの診断がされています。

 

症状があっても食道アカラシアと診断されるまでに4-5年かかる方が多いとも言われています。

 

 

食道アカラシアの症状

 

 

食道の通過障害による症状がでます。

最も多い主訴は、食事のつかえ感です。

のどに近い部分から食道と胃の部分まで広い範囲でつかえ感がみられます。

 

夜間就寝中の嘔吐症状がみられることがあります。

 

特徴的な症状は、就寝中や早朝に逆流を生じて、食物や泡のような唾液が逆流することです。

 

夜間に咳き込んで目が覚めることも食道アカラシアの特徴です。

 

逆流、胸焼け、胸痛の症状もありますが、頻度が高い逆流性食道炎にもみられる症状です。

食道アカラシアが逆流性食道炎と誤診される原因です。

 

 

食道アカラシアの検査

 

 

食道内圧検査(HRM)

 

アカラシアの診断には食道内圧検査がが不可欠です。

 

近年1cm間隔でセンサーを配置したHRM(高解像度食道内圧検査)が開発され、

広く行われるようになっています。

 

食道の上部から下部に伝播する1次蠕動波により嚥下した食物は下部食道に送られます。

嚥下に伴って、下部食道括約筋も弛緩し、運ばれた食べ物が食道から胃に流入します。

 

この一次蠕動波が消失し、下部食道括約筋(LES)の弛緩不全を認めると

食道アカラシアと診断されます。

 

食道アカラシアには内視鏡検査やバリウム検査での所見が軽微な症例があり、

HRMで初めて診断されることも多いとされています。

胃酸を抑えるPPIで効果が乏しい逆流性食道炎に関しては、

専門施設へ紹介しHRMを行うことが重要です。

 

 

内視鏡検査

 

 

胃カメラ検査で食道アカラシアの確定診断を行うことは残念ながらできません。

特徴的ないくつかの所見があります。

1 食道内腔の拡張

 

2 食物残渣や液体の貯留

 

 

食道は残渣がない状態が正常であり、

少量の泡沫や粘液以外の貯留物が存在する場合には、通過障害の可能性を考える必要があります。

3 食道粘膜の白色化・肥厚

 

4 食道胃接合部の機能性狭窄(胃内何店での巻きつき、めくれ込み)

 

5 同期性収縮などの食道の異常収縮波の出現

 

上記の5項目が食道アカラシア取扱規約に記載されています。

 

この項目ではないですが、食道下部にみられる縦走ひだはpinstripe patternと言われ、

食道アカラシアに特徴的な所見です。

 

 

異常収縮を含む内輪筋の収縮に関連していると報告されいます。

典型的な拡張や残渣などを認めない比較的初期の症例でも

陽性になることが多く,食道アカラシアの早期診断に役立つ可能性があります。

 

食道アカラシアの治療(POEM)

 

 

 

従来は固く締まった食道の筋肉を緩める薬による治療、

食道に入れたゴム製の風船を膨らませて締まった筋肉を緩める治療、

筋肉の一部を切って緩める外科手術が行われていました。

 

しかし、合併症や治療の繰り返しなどさらなる治療が期待されていました。

 

昭和大学豊洲病院の井ノ上教授が画期的な内視鏡を用いて、

患者さんの体の表面に傷をつけない手術方法(POEM)を2008年に開発されました。

安全性や有効性が確認されたため、2016年から保険適用になっています。

方法は、全身麻酔で、口から内視鏡を入れて治療を行います。

内視鏡の先からナイフを出し、食道の粘膜を切ります。

 

POEMはまず、

食道の粘膜と、筋肉の間にトンネルを掘るようにして進み、

食道と胃のつながる部分の筋肉の一部を切ります。

治療後のトンネルの入り口は小さなクリップでとめます。

なんと入院も治療4日後に退院できるようです。

 

有効性の高さと安全性の高さから、今後の食道アカラシアの第一選択として注目されています。

 

このような有効な治療法がある現在、診断の難しい食道アカラシアを

正しく診断することが消化器、内視鏡専門医の役割です。

 

まとめ

 

食道アカラシアは10万人に1人と言われていますが、

実はさらに頻度が高い病気の可能性があります。

現在、有効な治療法が開発されています。

 

寝ているときに食事が逆流してくるなど特徴的な症状がある方は

一度内視鏡検査をおすすめします。

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