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健康診断で貧血を指摘された
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めまいや倦怠感がいつもある
このような症状はありませんか?
貧血、特に鉄欠乏性貧血が原因かもしれません。
鉄欠乏性貧血は若い女性の方を除くと胃がん、大腸がんなど
消化管のがんの可能性が高く原因の検査が必要です。
今回鉄欠乏性貧血の症状や原因、治療について説明します。
鉄欠乏性貧血とは
体内の鉄が不足することで、赤血球に含まれているヘモグロビン
の合成に必要な鉄分が不足することで起こる貧血です。
貧血の分類
貧血の分類には何種類かありますが、
赤血球の大きさで分ける方法があります。
平均赤血球容積(MCV)が80以下の場合小球性貧血、
80~100が正球性貧血、
100以上が大球性貧血です。
3種類に分けられます。
正球性貧血の代表的な疾患は、腎機能障害による貧血や骨髄での貧血です。
大球性貧血の代表的な疾患は、胃がんの術後の貧血や
アルコールの飲み過ぎによる貧血が考えられます。
小球性貧血の代表的な疾患は鉄欠乏性貧血です。
すべての貧血の約70%がこの鉄欠乏性貧血とされています。
鉄欠乏性貧血の症状
貧血には様々な症状がありますが、特徴的な症状に絞ってお伝えします。
摂食障害:氷を食べたくなります。
脳への酸素供給量の低下や満腹中枢障害、体温調節障害などが原因と考えられています。
スプーン爪:爪がそりかえり、割れやすくなります。
摂食障害、スプーン爪は比較的鉄欠乏性貧血に特徴的な所見とされています。
倦怠感:疲れやすく、だるさが起こりやすくなります。
めまい:立ちくらみやふらつきの症状がでやすくなります。
無症状:貧血があっても自覚症状がない方は多くおられます。
健康診断などの血液検査で指摘されます。
貧血の症状は気づきにくく、鉄欠乏が治って貧血の症状だったとわかることがあります。
さらにゆっくりした貧血は症状がでにくいです。
貧血とはいえない症状
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電車でたっているときに倒れた。
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トイレで排便のときに意識を失った
一般的に貧血と言われる症状ですが、医学的には
迷走神経反射という症状です。
緊張やストレスなどが原因で自律神経のバランスが崩れることで
脳に血流が足りなくなりでる症状です。
医学的な貧血とは違います。
鉄欠乏性貧血の診断基準
貧血かどうかは血液検査で判断します。
Hb値で判断します。日本人ではHb値が男性13.0g/dl,女性12g/dl以下が貧血の基準です。
鉄欠乏性貧血では、血清フェリチン値(貯蔵鉄)が低下します。
フェリチンが低下するのは鉄欠乏性貧血のみなので
フェリチンが低下していれば鉄欠乏性貧血の確定診断となります。
鉄欠乏性貧血の原因
鉄欠乏になった原因を突き止めることが最も重要です。
①鉄需要の増加(思春期、妊娠)
②鉄供給の低下(鉄の摂取不足、吸収不良)
③鉄喪失(生理、消化管出血、婦人科疾患など)
日本の通常の食生活をしている状態において、
食事での鉄分の摂取不足というのは通常起こりません。
出血での喪失が最も多い原因です。
目に見えて出血がある場合、気づかないような少量ずつの出血の場合どちらもあります。
消化管、婦人科系いずれかが多いです。
生理による貧血
妊娠可能な女性には貧血がかなり多くみられます。
5人に1人は貧血であり、一般人口と比べると約20倍の頻度です。
貧血になる原因でもっとも多いです。
消化管出血のよる貧血
男性は消化管出血がもっとも多い貧血の原因です。
顕在性の出血つまり、目に見えたる吐血、下血、血便の症状がある場合があります。
目に見えない潜在性の出血が原因のこともあります。
潜在性の出血では、大腸がん、胃がん、食道炎、
消化性潰瘍、胃炎、炎症性腸疾患、血管拡張症、小腸腫瘍などが原因の可能性があります。
貧血の原因で多いのは胃がん食道がん大腸がん
鉄欠乏性貧血は男性ではとくに、消化管がんの可能性が高いです。
貧血のある方と貧血のない方を比べると、
上部消化管のがん(胃がん、食道がんなど)が6.3倍見つかっています。
また、鉄欠乏性貧血の方に内視鏡を行ったところ、16%にがんや腫瘍が見つかったと報告されています。
男性、閉経後の女性にはとくに重要です1)。
男性や妊娠期間が終わった女性の鉄欠乏性貧血は2%程度の方にしかみられません。
鉄欠乏性貧血の治療
①原因の治療
大腸がんや潰瘍などがあればその原因に対する治療が必要です。
②薬物療法
基本的には鉄剤の飲み薬による治療を行います。
鉄剤には吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状が10-20%程度の方でることがあります。
通常1-2週間で消化器症状は改善することが多いです。
ヘモグロビンは6-8週間で正常化しますが、
貯蔵鉄であるフェリチンはまだ少ない状態です。
鉄剤の内服をやめてしまうとすぐに貧血が再発するため、
フェリチンが正常になるまで6ヶ月程度鉄剤の内服をおすすめしています。
まとめ
鉄欠乏性貧血は若い女性の方は生理での出血が原因であり、
それほど心配することはありません。
それ以外の方は、胃がん、大腸がんなどの消化管のがんの可能性があり、
貧血の原因の検査として内視鏡検査をおすすめします。
1)Khadem G, Scott IA, Klein K. Evaluation of iron deficiency anaemia in tertiary hospital settings: room for improvement? Intern Med J 2012; 42:658.
院長 中谷行宏
私は消化器病専門医、内視鏡専門医として診療をおこなっています。
月200件以上の胃カメラ、大腸カメラ検査を行っています。