- 検診の胃カメラの所見に胃粘膜下腫瘍と記載されていた
- 胃粘膜下腫瘍って悪性なの?
- 胃粘膜下腫瘍は放置していいか
胃粘膜下腫瘍という言葉自体を聞きなれない人が多いと思います。
胃カメラ検査を日常的に行っていると、胃粘膜下腫瘍は出会うことが多い病変です。
今回こんな疑問に答える記事をお書きします。
胃粘膜下腫瘍とは
粘膜下腫瘍は、腫瘍が粘膜の下に存在していて、
正常粘膜が盛り上がっているように見える病変です。
胃では実際に腫瘍があるものや、肝臓や腸など他の臓器に圧迫されているだけで
腫瘍がない場合も含まれています。
胃粘膜下腫瘍の症状
胃粘膜下腫瘍はほとんどの場合、無症状です。
検診のバリウム検査や胃カメラ検査で見つかることが多いです。
胃を圧迫するほど大きなものは圧迫感や腹痛の症状がでる場合があります。
また、腫瘍が露出することで出血をきたし、貧血になることはあります。
ただ、どちらも頻度はかなり低いです。
胃粘膜下腫瘍の原因
ポリープやがんは上皮性腫瘍と言われ、粘膜、つまり胃の表面から発生します。
一方、粘膜下腫瘍は粘膜の下(粘膜下層・粘膜筋板・筋層)より発生します。
良性の腫瘍としては脂肪腫、平滑筋腫、迷入膵、リンパ管腫瘍、神経鞘腫など、
悪性の腫瘍としては「胃消化管間質腫瘍 (Gastrointestinal stromal tumor:GIST)」、
悪性リンパ腫、肉腫などがあります。
このなかではGISTが最も高頻度で,65~80%を占めています。
ガイドラインではサイズにかかわらずGISTと診断されれば手術適応となります。
GISTの頻度は低く、人口100万人あたり20人/年と推定されています。
胃粘膜下腫瘍が悪性の確率
現在ガイドラインに従って胃粘膜下腫瘍の経過観察の方法が定められています。
基本的に組織検査を行ってから治療方針を行うことが多くなりました。
以前の手術を行った報告では、GISTの結果が50%程度と報告もあります。
ただ、現在は大きさや悪性所見があれば組織検査を行う方針が定められており、
胃粘膜下腫瘍のうちで悪性、GISTの確率は不明です。
胃粘膜下腫瘍の治療方針
① 2cm以下の胃粘膜下腫瘍
日常的に出会う胃粘膜下腫瘍は2cm以下のものがほとんどです。
胃粘膜下腫瘍の治療方針は2cm未満に対して
悪性所見(潰瘍形成,辺縁不整,増大)がなければ,年1-2回の経過観察となっています。
増大傾向あるいは悪性所見があれば、
CT,EUS,EUS-FNAで組織検査を行い、そ
の結果で経過観察、相対的な手術適応となっています。
② 2cm以上5cm未満の胃粘膜下腫瘍
CT、EUS、EUS―FNAなどによって精査がすすめられています。
③ 5cm以上の胃粘膜下腫瘍
5cm以上の胃粘膜下腫瘍は基本的に手術が推奨されています。
胃粘膜下腫瘍の治療
基本的に外科的な治療を行います。
腫瘍を摘出するために、開腹・または腹腔鏡下での切除を行うことが多いです。
近年では、内視鏡医と外科医が合同で
腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除(LECS: Laparoscopy and Endoscopy Cooperative Surgery)
という方法の治療の有効性が報告され、行う施設が増えてきております。
まず、お腹に1cm程度の孔(あな)を数ヶ所開け、
お腹の中で器具を操作し手術を行います。
おなかのなかから胃粘膜下腫瘍が見えにくいことがあるため、
同時に胃カメラを使って正確に腫瘍の範囲を診断できます。
このような方法で、胃を切除する範囲が最低限になります。
胃粘膜下腫瘍のよくある質問
「胃粘膜下腫瘍は自然消滅、消えることがあるんですか。」
このような質問を受けることがあります。
基本的に胃粘膜下腫瘍が自然に消えることはないです。
ただ、実際に腫瘍がなく、他の臓器からの圧迫などが
粘膜下腫瘍として見えていた場合には、翌年に検査すると消えることがあります。
院長 中谷行宏
消化器病専門医、内視鏡専門医としておなかの症状がある方の診療を行っています。
月200件以上の胃カメラ、大腸カメラ検査を行っています。