便秘

便秘とは、本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態のことで、経験した方も多いと思います。2016年国民生活基礎調査によると症状のある方は2-5%と多く、男性(2.5%)より女性(4.6%)に多い傾向があります。若い方は、女性に多く、高齢になると男性の比率が増加し、80歳以上では男女ほぼ変わりがありません。

特に女性の方がなりやすい便秘。近年日本でも様々な薬剤が発売されており、以前よりも治療の選択肢が増えてきております。今回は便秘の治療薬に関してお伝えします。

1 便を軟らかくする薬(浸透圧性下剤)

①:酸化マグネシウム:塩類下剤。浸透圧の作用で水分を集めることで便が軟らかくなる。腸を刺激することがなく、耐性ができない。

メリット:値段が安い

用法・用量:1日1-3回毎食後1-2錠20円/日程度(毎食後1錠の場合)

デメリット(副作用):腎機能低下の方は高マグネシウム血症のリスクになる。eGFR(推定糸球体濾過量)が60(ml/分/ 1.73m2 )未満の方はマグネシウムを測定したほうがよく、30未満には使用しづらいです。

飲み合わせがよくない薬が多い。テトラサイクリン系、ニューキノロン系などの抗生剤、ビタミンD製剤など。

②:ラグノスNF経口ゼリー:糖類下剤。

日本では2019年発売されました。ラグノスNF経口ゼリーは1包(12g)にラクツロースを6.5g含んでいる製剤です。ラクツロース自体は肝性脳症の治療に使用されていましたが、慢性便秘症に対して、今回新たに発売されました。結晶ラクツロースが有効成分でガラクトース、乳糖が1%以下で血糖上昇作用がありません。
人はラクツロースを分解することができないため、腸内へ到達し、乳酸菌などの善玉菌によって有機酸に分解され、善玉菌の増加、悪玉菌の減少作用があります。また、ラクツロース、有機酸による浸透圧上昇作用によって、水分が腸管内に移動することで便秘改善効果があるとされています。

臨床試験において、自発排便回数がプラセボ2.04/週に対して、ラグノス48g/日で3.78/週、ラグノス72g/日で5.06/週と有意な排便回数の増加が認められております1)

メリット:大腸刺激性下剤ではなく、耐性ができません。マグネシウム上昇がなく、透析の方に使用できます。血糖上昇がなく、糖尿病の方に使用できます。

デメリット(副作用):下痢、腹部膨満、腹痛といった消化器症状

用法・用量:24g(本剤2包)を1日2回経口します。

1)(株)三和化学研究所社内資料(第Ⅱ/Ⅲ相試験)

③:モビコール

日本では、大腸検査の前処置用として使用されていましたが、便秘の治療として、2018年に発売されました。海外ではガイドラインで推奨され、多くの方が使用しております。

作用機序:有効成分のマクロゴールはエチレングリコールを重合させたポリエチレングリコールで、浸透圧を高めることで腸管内の水分量が増加し、便秘を改善させる。体内にはほとんど吸収されません。成人、小児どちらにも自発排便回数の増加が報告されています2)

2)モビコール添付文書

メリット:体内に吸収されないので、併用注意薬がない。
浸透圧下剤なので刺激が少ない。腎機能が悪くても使える。

デメリット:毎回水にとかして飲む必要がある。

用法・用量:1日1~3回1包あたりコップ1/3程度(約60ml)の水に溶解し服用します。

モビコール、ラグノスなどの浸透圧性下剤も今後便秘治療薬の中心になってくると思われます。

2 上皮機能変容薬

①:アミティーザ(一般名:ルビプロストン)

腸管内の水分の分泌にはクロールイオン(CL-)が関与しており、クロライドチャネルによって細胞内から細胞外(腸管内)へ移動します。アミティーザはクロライドチャネルを活性化する薬剤で、腸管内に水分を分泌することで便秘を改善します。

デメリット(副作用):下痢(30%)、悪心(23%)が多くあらわれます。また、1日2回投与である点、特に若い女性に悪心が起こりやすいデメリットがあります。薬価が比較的高いこともデメリットです。

用法・用量:1日2回朝食後と夕食後

②:リンデス

作用機序:グアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体刺激薬で、腸粘膜上皮細胞に発現しているGC-C受容体を刺激し、上皮細胞内の「cGMP」が増加します。cGMP上昇によって、クロールイオン(Cl-)が細胞内から細胞外(腸管内)に移動します。電化を合わせるためナトリウムイオンが腸管内に移動しますNaとCLが合わさり、NaClとなり、腸管内の浸透圧が亢進し、水分が腸管内に移動することで、便秘を改善します。

また、求心性神経(痛みを感じる神経)を抑制することで、慢性便秘による痛みを緩和する効果もあります。

このような作用があり、リンゼスはもともと便秘型過敏性腸症候群(IBS)に使われていた薬ですが、2018年8月に慢性便秘症にも使うことができるようになりました。臨床試験では、投与中の1週間に、排便回数の変化が、プラセボが1.48でしたが、リンデスは4.02で排便回数の改善効果が認められています4)

用法・用量:1日1回2錠食前

メリット:悪心の副作用が少ないことです。慢性便秘による痛みが強く出ている方によい選択肢だと思います。

デメリット(副作用):主な副作用は下痢ですが、減量休薬で対処可能です。

4)リンデス添付文書

3 胆汁酸を介した新しい便秘薬

グーフィス(一般名:エロビキシバット):

胆汁酸は、脂肪の脂肪性ビタミンの消化・吸収、粘膜に作用して蠕動運動の亢進、老廃物、薬物の排出に関与しております。腸管内の胆汁酸が不足すると、便秘を発症する可能性が高くなります。胆汁酸は、ほとんどが回腸で再吸収され、肝臓に送られ再利用されます。これは「腸肝循環」と呼ばれています。

グーフィスは胆汁酸の再吸収に関与するトランスポーターを特異的に阻害することで、腸管内の胆汁酸が増え、腸の蠕動運動が活発化し、自然な排便を促すことができることが特徴です。

臨床試験では、1週間の投与期間での排便回数の変化は、プラセボが1.73と比べ、グーフィスが6.4とプラセボと比較し、排便回数の改善効果が認められています5)6)

デメリット(副作用):併用注意の薬剤が多いことです。胆汁酸製剤、アルミニウム含有制酸剤、コレスチラミン、コレスチミド、ジゴキシン、ダビガトラン、ミダゾラムが併用注意にあたります。

メリット:1日1回食前投与で、悪心の副作用が少ないです。消化管運動促進作用もあります。

用法・用量:1日1回2錠食前

5)グーフィス錠添付文書
6) Nakajima A, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2018 Aug;3(8) 537-547

4 刺激性下剤

昔は酸化マグネシウムと刺激性下剤しかなくて頻繁に処方しておりました。

大腸を無理矢理刺激することで便秘を改善する薬です。市販薬では、コーラックなどです。

主な薬剤としては、アントラキノン系薬剤のプルゼニド、センノシド、アローゼン、セチロ、ヨーデルS、大黄などを含むいろいろな漢方薬、ジフェニール誘導体系薬剤のピコスルファートなどです。

副作用:下剤の市販薬に多く含まれており、安全と思われるかもしれませんが、習慣性、依存性、薬剤の耐性があると言われています。明確なエビデンスはないようですが、習慣的に使用するとだんだん効きにくくなってくる印象です。もともと便がでなかったのか、下剤を飲むうちに悪化したのか、下剤を大量に飲まないと排便がされない結腸無力症になる可能性も考えられます。

アントラキノン誘導体が長期間、大量に投与されれば、大腸腫瘍のリスクを高め、壁神経叢の障害と大腸運動異常を引き起こす可能性は否定できないと慢性便秘症診療ガイドライン2017に記載されています。

便秘

まとめ

近年日本において、新たな便秘薬が複数発売されました。以前の酸化マグネシウムと刺激性下剤のみではなく、現在日本には多数の薬の選択肢があります。便秘で薬剤を内服しているがうまくいっていない人、市販薬を頻繁に使用している方は、一度医療機関で相談をおすすめします。

登戸なかたに消化器・糖尿病内科
  • 診療科目:
  • 消化器内科
  • 内視鏡内科
  • 糖尿病内科
  • 内科

〒214-0014
神奈川県川崎市多摩区登戸2565番地1 イルマーレ2階

JR南武線、小田急小田原線「登戸駅」徒歩1分
小田急小田原線「向ヶ丘遊園」駅徒歩5分

044-900-3388
診療時間 日祝
9:00~12:30
15:00〜18:30

▲土曜午後の診療は15:00~17:00
中谷あゆみ医師の診察受付は平日16時まで。土曜日は休診です。

胃カメラ検査 日祝
9:00~12:30
16:30~17:30
大腸カメラ検査 日祝
13:00~15:00

TO TOP TO TOP