脂質異常症

1 脂質異常症とは

脂質異常症(高脂血症)とは、血液中の脂肪分が増えすぎて、血液がドロドロになった状態です。この状態が続くと、血液の巡りが悪くなり、動脈硬化を起こします。動脈硬化性疾患(心筋梗塞、脳梗塞など)による死亡は、がんに次ぎ、死因の約26%を占めています。脂質異常症は、以前は「高脂血症」と呼ばれておりましたが、善玉のHDLコレステロールは数値が低いほど悪いので、今では「脂質異常症」と呼ばれています。動脈硬化の危険因子としては、高血圧、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病(CKD)、喫煙、メタボリックシンドロームなどがあり、これらの危険因子が多いほど、動脈硬化性疾患が起こりやすくなります。脂質異常症は、動脈硬化性疾患のとくに強力な危険因子です。

2 脂質異常症の症状

脂質異常症には症状がありません。このため、脂質異常症を治療せずに、心筋梗塞、脳梗塞になって初めて事の重大性に気づく人も少なくありません。

3 脂質異常症の原因

3-1 原発性脂質異常症

血清脂質やリポたんぱくの代謝系における遺伝子の異常が原因で発症する脂質異常症です。

A家族性複合型高脂血症:最も頻度の多い遺伝的な高脂血症で、単一の遺伝子異常によるものではなく、多因子疾患であることが示唆されております。約100人に1例と極めて頻度が高いです。LDL-C値は家族性高コレステロール血症ほど高くはなりません。

B家族性高コレステロール血症(FH):高LDLコレステロール血症、早発性(男性55歳未満、女性65歳未満)冠動脈疾患、腱・皮膚黄色腫を3主徴とする常染色体遺伝疾患です。頻度は、200-500人に1人程度とされています。極めて動脈硬化性疾患リスクが高く、早期の適格な診断と厳格な治療が必要です。

脂質異常症(高脂血症)

3-2 続発性脂質異常症

多くの場合、脂質異常症は続発性の原因によるものです。最も多い原因としては、体を動かさない生活習慣に加え、飽和脂肪酸、コレステロール、トランス脂肪を食事から過剰に摂取することです。その他の続発性の原因には、糖尿病、多量の飲酒、慢性腎臓病、甲状腺機能低下症、原発性胆汁性肝硬変、ある種の薬の使用などがあります。これらの原因を改善することで、脂質異常症も改善する場合があります。

4 脂質異常症の診断

原則として空腹時の採血を基準としています。以下の基準がもうけられていますが、この基準値はスクリーニングのためのもので、薬物療法を開始するための値ではありません。

脂質異常症(高脂血症)

5 管理目標

個々の患者の背景(性別、年齢、危険因子の数、程度)によって冠動脈疾患のリスクも大きく異なります。動脈硬化性疾患の発症リスクの高い方には積極的な治療を行い、リスクの低い者は必要以上の治療を行わないために、個々のリスクを評価し、それに対応した脂質管理目標を定めることが必要です。

脂質異常症診療ガイド2018年度からは、冠動脈疾患と脳梗塞の既往歴がない大阪市吹田市住民5521名(男性2796名、女性2725名)を約12年追跡したコホート研究から作成した吹田スコアが管理目標、発症予測のスコアとして使用されています。

リスクに基づくカテゴリー分類は、図に示すフローチャートに基づいて行われます。最初に冠動脈疾患の既往歴があるかどうか確認します。既往がある場合は、2次予防(再度冠動脈疾患を発症する)のため厳重な管理が必要になります。次に、1次(冠動脈疾患をはじめて発症する)予防のため、糖尿病、慢性腎臓病、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患があれば高リスクとなります。高リスク病態がなければ、吹田スコアによる各危険因子の合計得点を計算し、低~高リスクに分類し、脂質管理目標値を決めます。

脂質異常症(高脂血症)

脂質異常症(高脂血症)

吹田スコアによる各危険因子の得点

①-⑧の合計得点によりリスクを評価します。それぞれのリスクに応じて脂質管理目標値が決まります。

脂質異常症(高脂血症)

脂質異常症(高脂血症)

このリスク分類に応じて脂質管理目標値がきまります。吹田スコア40点以下は低リスク、41点から55点が中リスク、56点以上が高リスクの10年以内の冠動脈疾患の発症確率になり、リスクが高いほどコレステロールを下げたほうがよく、厳格な管理が必要になります。

冠動脈疾患発症予測のソフトが、webあるいはアプリで公開されており、項目を順番に埋めると、10年以内の冠動脈疾患発症確率と、脂質管理目標値がわかります。健診等でコレステロールの採血を行ったことがある方は、ご自身でも冠動脈疾患発症のリスクを評価してみることをおすすめします。

6 脂質異常症の治療

脂質異常症の治療には、食事療法、運動療法、薬物療法があります。食事療法、運動療法ともに高血圧、脂質異常症、糖尿病などのリスクを下げる効果があり、推奨されています。とくに薬物療法について説明します。

6-1 LDL-Cが高い場合

第一選択薬はスタチンが推奨されています。効果が十分でなければその増量もしくはエゼチミブ(ゼチーア)もしくはレジン(ゼチーア)との併用が有効とされています。

他にはニコチン酸誘導体、プロブコール、PCSK2阻害薬、MTP阻害薬などがありますが、スタチンを基本として治療を行います。

6-2 Non-HDL-Cが高い場合(LDL-CとTGが高い場合)

Non-HDL-Cの増加を伴う高TG血症では、高LDL-C血症の管理を目標として、やはりスタチンを中心とした薬物療法を行います。TGが高い場合にはフィブラート系薬または選択的PPAR-αモジュレーターを使用します。ペマフィブラート(パルモディア)は、2018年に発売となった新規フィブラート系の薬剤で、選択的PPARαモジュレーターです。TGの低下に加えて、HDL-Cを増加させる作用もあると報告されています。

6-3 治療の効果

脂質異常症では、特にLDLコレステロールを下げることで、動脈硬化性疾患の発症を抑制できることが報告されています。

我が国のMEGA研究では、LDL-Cの18%の低下で、冠動脈疾患は33%の低下を認めています1)。欧米のメタ解析では、スタチンによる治療で、LDL-C1mmol/L(約39mg/dl)の低下ごとに主要冠動脈イベントは約24%、脳卒中イベントは約15%抑制され、脳出血には影響がないことが示されています2)

また、5年主要血管イベント発症リスクが10%未満の低リスクの方でも、血管死、全死亡が減少し、がん、血管以外の死亡の増加は認めませんでした3)。すべての方においてLDL-Cは下げたほうがよいということになります。

1) Otsuka T, et al. Preventive effect of pravastatin on the development of hypertension in patients with hypercholesterolemia: A post-hoc analysis of the Management of Elevated Cholesterol in the Primary Prevention Group of Adult Japanese (MEGA) Study. J Clin Lipidol. Jul-Aug 2017;11(4): 998-1006

2)CTT Collaboration. Lancet 2010; 376; 1670-80

3)Cholesterol Treatment Trialists' (CTT) Collaborators.The effects of lowering LDL cholesterol with statin therapy in people at low risk of vascular disease: meta-analysis of individual data from 27 randomised trials. The Lancet, Early Online Publication, 17 May 2012.

7 高齢者の治療

脂質異常症診療ガイド2018年版において、65歳以上75歳未満の高齢者では、高LDL-C血症が冠動脈疾患の重要な危険因子であり、スタチン治療で冠動脈疾患、非心原性脳梗塞の一次予防効果が期待できるとされています。さらに、アメリカでの75歳以上の退役軍人32万6981人の検討では、スタチンにより、全死亡0.75倍、心臓血管死亡0.80であったと報告されています4)。高齢の方でも脂質異常症の改善は死亡減少効果があります。

4) Orkaby AR, et al. Association of Statin Use With All-Cause and Cardiovascular Mortality in US Veterans 75 Years and Older. JAMA. 2020 Jul 7.

まとめ

脂質異常症は、動脈硬化性疾患の危険因子の一つです。脂質異常症に対して使用される頻度が高いスタチンは、副作用が少なく薬価も安いことが特徴です。健診等でコレステロールが高いことを指摘された方は、放置せずに医療機関の受診をおすすめします。

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