脂肪肝

脂肪肝とは

脂肪肝とは、肝臓に中性脂肪がたまり肝臓の30%以上を脂肪がしめている状態です。いまや、日本人の3人に1人が脂肪肝といわれています。
腹部エコーでは、20%以上の肝細胞に脂肪が沈着した場合に脂肪肝と診断ができます。以前は軽い病気と思われていましたが、肝硬変や肝臓がんへと進行する可能性があり、様々な生活習慣病のリスクも高めることがわかってきました。脂肪肝の原因や症状、脂肪肝を改善させる方法についておつたえします。

脂肪肝の原因

  • 肥満
  • 運動不足
  • 飲酒

食事でとった糖質は肝臓で中性脂肪に変化します。脂質や糖質をとり過ぎ、さらに運動不足の場合には、使いきれなかった脂肪が全身に蓄えられます。また、脂肪酸やブドウ糖が中性脂肪として肝臓にも蓄積します。
お酒の飲み過ぎでも肝臓に中性脂肪がたまります。アルコールが分解される時、中性脂肪が合成されやすくなるからです。肥満になると、肝臓での脂肪酸の燃焼が悪くなるので、肝臓に中性脂肪がさらにたまりやすくなります。

脂肪肝と肥満

我が国の肥満人口は男性1300万人、女性1000万人にのぼっております。BMI25以上の肥満の方は脂肪肝を合併した方が多くいます。
健診で約30%の方は、超音波検査やCT検査で脂肪肝があり、その頻度は増加しています。脂肪肝は中年男性に多いですが、女性でも中高年になると頻度が増加します。


脂肪肝2

お酒を飲まない人の脂肪肝(NASH

お酒の飲み過ぎが肝臓に悪く脂肪肝になりやすいことは、知っている方も多いと思います。日本人の脂肪肝の原因で多いのは、実は飲み過ぎではなく、食べ過ぎによるものです。
これは非アルコール性脂肪性肝疾患nonalcoholic fatty liver disease(NAFLD)と呼ばれております。肥満や高血圧などが合併しやすく、生活習慣が関連した全身疾患とされています。
NAFLDには、症状が軽く改善しやすい単純性脂肪肝(NAFL)と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の2種類があります。NASHは放置すると肝硬変、肝細胞がんへと進行することが知られています。


脂肪肝1

脂肪肝の症状

肝臓は症状がでにくい臓器です。脂肪肝そのものに症状はありません。もともと、脂肪肝は肝臓に中性脂肪が蓄積するだけで心配のない病気と考えられていましたが、NASHへの進行のほか、狭心症や心筋梗塞など心疾患の合併が多く、生活習慣病の原因にもなることがわかってきました。
インスリンの効果が弱まり、糖尿病の原因にもなります。最近太ったかなと心当たりがある方は、血液検査を受けたり、健康診断の肝機能の数値を確認してみてください。

脂肪肝の治療(脂肪肝の改善)

脂肪肝の治療は、脂肪肝が関連するメタボリックシンドロームのコントロールと肝障害の予防が主になります。食事療法、運動療法などの生活習慣の改善により、肥満、糖尿病脂質異常症高血圧を是正し、脂肪肝を改善させることが治療になります。

食事療法

飽和脂肪酸の摂取を抑えます。糖類、果糖は控えめにし、穀類などから炭水化物を摂取しましょう。
脂質を控えめにした食事が望ましいですが、摂取するカロリーを制限することでも同様の効果が得られます。

コーヒーと脂肪肝について

1日4杯以上のコーヒー摂取によって肝臓の脂肪肝、線維化が改善したというデータがあります1)。さすがに1日4杯は多いですが、1日1杯のコーヒーで死亡率が減少したというデータもあり、コーヒーは概ね健康によい飲み物です2)

1)Niezen S, et al. Coffee consumption is associated with lower liver stiffness: a nationally representative study. Clin Gastroenterol Hepatol.

2)Liu D, et al. Association of Sugar-Sweetened, Artificially Sweetened, and Unsweetened Coffee Consumption With All-Cause and Cause-Specific Mortality: A Large Prospective Cohort Study. Ann Intern Med. 2022 May 31. Online ahead of print.

減量と運動

体重を減らすことで脂肪肝は改善します。ただし、肝臓の脂肪化の改善には7%を超える体重減少が必要とされています。体重70kgであれば約5kgのダイエットであり、実践することはなかなか難しいです。
運動することよっても、肝機能障害、肝臓の脂肪化が改善します。肥満を合併した脂肪肝の方が、30-60分、週3-4回の有酸素運動を4-12週継続すると、たとえ体重が減らなくても肝臓の脂肪化が改善することが示されています。
レジスタンス運動いわゆる筋トレはエネルギー消費量は有酸素運動より低いですが、こちらも肝臓の脂肪化を改善させます。運動は他の生活習慣病の改善、予防にもなるため積極的に実践していきましょう。

薬物療法

脂肪肝を改善させる薬剤に関しては、効果がある薬剤が分かってきています。糖尿病で使用されるピオグリタゾン、SGLT2阻害薬、GLP1作動薬など肝機能、肝組織の線維化を改善させたと報告されています。
高血圧の方にはACE阻害薬、ARBが肝機能改善に有効です。脂質異常症の方は、悪玉コレステロールを下げる代表的なスタチン製剤や、フィブラート製剤も脂肪肝を改善させる可能性が報告されています。
ビタミンE製剤は脂肪肝を効果が報告されています。様々な薬剤があるのですが、脂肪肝自体に対しての保険適応がある薬剤は現在ありません。
将来的に保険適応となる可能性はありますが、日本の医療財政を考えると難しいかもしれません。

まとめ

診察室

脂肪肝は、進行し肝硬変に至らなければ予後良好な疾患です。健康診断や人間ドックで肝機能障害や脂肪肝を指摘されても、症状が無いからと多くの方が放置をしているのが現状です。
確かに脂肪肝でアルコールを飲まない方の多くは予後が良好な単純性脂肪肝です。しかし、そのうちの10-20%の方は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の方であり、肝硬変に至り肝臓がんを発症する可能性もあります。脂肪肝を改善させるためには、食事、運動、減量など生活習慣の改善が必要です。
高血圧糖尿病脂質異常症などの生活習慣病の予防にもつながります。ただの脂肪肝と思って放置し、肝硬変、肝臓がんが突然発見されることがないよう、生活習慣の改善、定期的な通院をおすすめします。

TOPへ