慢性胃炎

慢性胃炎について

腹痛一概に胃炎と言っても、胃炎には細かな分類があり、胃がんになるリスクがあるものや、それほど心配がないものまで様々です。発症の経過から胃炎は急性胃炎と慢性胃炎に分けられますが、一般的に胃炎とは慢性胃炎を意味します。
胃炎はピロリ菌と関連する胃炎、ピロリ菌と関連しない胃炎があります。「胃カメラをしたら慢性胃炎があると言われた。」「検診でバリウム検査や胃カメラ検査で慢性胃炎と記載されていた。」などどんな胃炎でがんのリスクがどれくらいあるのか気になると思います。
今回慢性胃炎の分類と、特にピロリ菌が関連する萎縮性胃炎に関して詳しく説明します。

ピロリが関係しない慢性胃炎

表層性胃炎(稜線状発赤)

胃炎1胃の体部や前庭部大彎にみられる数条の縦走する帯状発赤のことです。胃のなかの空気量を減らすとひだの頂部に一致してみられます。正しい名称は稜線状発赤ですが、一般的に表層性胃炎の所見とされています。
ピロリがいない方に多い所見で、特に治療の必要はありません。

びらん状胃炎(たこいぼびらん)

胃炎2粘膜筋板を越えない浅い粘膜の組織欠損がびらんと定義されています。浅いキズのことです。前庭部、体部(胃の奥のほう)に多発する辺縁隆起を伴う胃炎のことで、たこの吸盤に似ていることからこの名がつけられています。
ピロリ菌との関連が少ないとされており、治療の必要はありません。

上記のような胃炎が検診の胃カメラ検査で指摘されていてもとくに心配いりません。

ピロリ未感染の胃

これまでにピロリ菌が感染していない胃粘膜であり、組織検査で好中球の浸潤、萎縮、腸上皮化生など胃炎のない粘膜です。代表的な所見が、RAC(regular arrangement of collecting venules)です。RACとは、粘膜上皮下に存在する集合細静脈が規則正しく配列する像のことを指します1)
胃角部~胃体下部小彎でみられることがピロリ未感染の特徴とされている。RACを認めると、95%の確率でピロリ未感染の正常な胃と報告されています。胃カメラ検査だけでピロリ菌がいるかどうかほぼわかります。

1) 八木一芳 他.Helicobacter pylori陰性・正常胃粘膜内視鏡像の検討 Gastroenterol Endosco 42:1977-1987, 2000

ピロリが関係する慢性胃炎

萎縮性胃炎

胃粘膜の菲薄化(うすくなること)によってひだの消失や、血管透見(血管が透けてみえること)を認めます。ピロリ菌がいる胃炎を意味し、胃がんのリスクが高い状態です。萎縮は胃の奥の前庭部から徐々に胃の上部に進行してきます。その進行度合いによる分類が木村・竹本分類です。

木村・竹本分類

萎縮境界が胃体部小彎側で噴門を超えない閉鎖型closed type(C1-C3)とそれを超えて大彎側にも進展する開放型open type(O1-O3)に分類されます。

C-1:萎縮が前庭部にとどまるもの
C-2:胃角部から胃体下部に至るもの
C-3:胃体上部までのもの
O-1:萎縮粘膜が噴門周囲にとどまるもの
O-2:O-1とO-3の間であり、萎縮が口側、大彎側への進展している状態
O-3:全体的に大彎のひだが消失し、萎縮が全体にあるもの

C-1:萎縮が前庭部にとどまるもの

胃炎C1

C-2:胃角部から胃体下部に至るもの
胃炎C2

C-3:胃体上部までのもの

胃炎C3

O-1:萎縮粘膜が噴門周囲にとどまるもの
胃炎O1

O-2:O-1とO-3の間であり、萎縮が口側、大彎側への進展している状態

胃炎O2

O-3:全体的に大彎のひだが消失し、萎縮が全体にあるもの
胃炎O3

胃炎の程度と胃癌リスク

人間ドックで発見された胃癌の検討では、内視鏡的な萎縮の範囲がC-0、C-1では胃癌の頻度は0%、C-2、C3で2.2%、O-1、O-2で4.4%、O-3で10.3%と報告されています。
つまり、萎縮の進展とともに胃癌リスクが高くなります。4)

4)井上和彦,藤澤智雄,千貫大介,他.胃癌発生の背景粘膜─
人間ドックにおける内視鏡検査からの検討.胃と腸 44:1367-1373, 2009

鳥肌胃炎

皮膚にみられる鳥肌のように、均一な顆粒状から結節が密集して認められるリンパ濾胞形成が著明な特殊型の慢性胃炎です。前庭部から胃角部に認められることが多いです。
ピロリ菌の初感染によって起こる過剰な免疫応答であり、ピロリ陽性の小児や若年者に発生する胃炎の一形態です。
若年者の胃癌、特に未分化型胃癌の派生母地とされ、若い女性においてオッズ比64.2と未分化型癌のリスクがかなり高いと報告されています2)。とくに注意が必要です。

2)Kamada T et al. Dig Endosc 19:180-184, 2007

慢性胃炎と胃がんのリスク

表層性胃炎、びらん性胃炎は慢性胃炎ではありますが、胃がんのリスクはほぼありません。治療の必要性もありません。
萎縮性胃炎はピロリ菌が関連する胃炎であり、進行度で違いがありますが、胃がんのリスクが高い状態です。

まとめ

胃カメラもし慢性胃炎を指摘されたら、早めに胃カメラ検査を受けてピロリ菌が感染している胃炎かどうか検査をおすすめします。

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