「会社の健診で血圧が高いと言われたけど、病院に行くの時間かかるし面倒だな。」
日本人がかかる病気のうちもっとも頻度が高いのが高血圧です。症状がでづらいため、放置しがちです。
高血圧ででやすい症状や原因、上昇するリスク、治療についてお伝えします。
高血圧の基準値
高血圧の基準は、診察室で140/90mmHg以上、家庭血圧で135/85mmHg以上が高血圧と定義されております。正常血圧は120/80mmHg以下であり、120/80mHg以上の方も、血圧管理の対象に含まれています。
2016年の国民健康・栄養調査によると、40歳-74歳の男性60%、女性41%、75歳以上では男性74%、女性77%が高血圧であり、最も頻度の高い生活習慣病です。
高血圧の方は4300万人と推計されており、年齢性別ごとの推定患者数は、加齢とともに増加する傾向があります。
高血圧の症状
高血圧に症状はほとんどありません。血圧がかなり高いときに頭痛、めまいなどの症状がでることもあります。
健診などで指摘された高血圧を放置した場合、知らないうちに心臓や血管に負担がかかり、心臓病、脳卒中、腎臓病など、命にかかわる病気を引き起こす原因になります。
また、全身の動脈硬化も進めます。動脈硬化による疾患(心筋梗塞、脳梗塞など)による死亡は、がんに次ぎ、日本人の死因の約26%を占めています。
高血圧の分類
診察室以外での血圧測定としては、家庭血圧測定があります。診察室での血圧のほうが緊張のためか高めにでることが多いです。
家庭血圧には、診察室血圧と同等か、それ以上の信頼性があり、血圧値のレベル分類に差がある場合には、家庭血圧による診断を優先します。
高血圧のリスク
高血圧は脳心血管病の主要な危険因子であり、年齢、既往歴、他の生活習慣病などのリスク因子と合わせて、低リスク、中等リスク、高いリスクに分類されます。
このようなリスク分類に基づき、治療を検討します。どの程度血圧を下げるかは、年齢、基礎疾患等に応じて降圧目標が定められており、それに応じて降圧治療を行います。
家庭血圧の重要性について
診察室以外での血圧測定としては、家庭での血圧測定があります。診察室での血圧のほうが緊張のため高めにでることがあります。家庭血圧には、診察室と同等か、それ以上の信頼性があります。
診察と家庭での血圧に差がある場合には、家庭血圧を優先します。当院では血圧手帳をお渡しし、日常的に自宅で血圧を測定していただいております。
高血圧の治療目標
リスクが高い方には厳しい降圧目標が設けられております。高齢者など血圧を下げすぎないほうがよい方もおられます。血圧を下げすぎた場合、死亡、脳卒中、腎機能低下の増加が報告されており、非高齢者には120mmHg未満、高齢者では130mmHg未満に血圧が低下した場合には注意が必要です。
収縮期血圧が10mmHgまたは拡張期血圧が5mmHg下がると、主要血管イベントが約20%、脳卒中で30-40%、冠動脈疾患で約20%、心不全で約40%、全死亡で10-15%減少することが明らかにされています。
高血圧の治療
生活習慣の改善
生活習慣の改善は、血圧を下げる効果が期待されるだけでなく、高血圧を予防する観点からも重要です。
食塩制限
塩分の取り過ぎは高血圧の原因になり、減塩で血圧が下がることが証明されています。日本人の食塩摂取量は平成29年の国民健康・栄養調査では、男性10.8g/日、女性9.1g/日と報告されており、まだ多い状態です。
果物や野菜、魚類、豆などを積極的に摂る : 果物に多く含まれるカリウムはナトリウムの血圧上昇作用に対して拮抗的に作用します。
野菜、魚類、豆などを積極的にとり、肉類を控えることで血圧が下がることも報告されています。
適正体重の維持
BMI=25.0~29.9の方は、BMI20未満と比べると1.5-2.5倍の高血圧発症リスクがあると推定されています。日本人において、3%以上の減量で有意な降圧効果があることが示されています。
運動療法
運動は収縮期血圧で2-5mmHg、拡張期血圧で1-4mmHgの低下が期待できます。体重、体脂肪の減少、インスリン感受性の改善、骨格筋量維持や関節疾患予防・改善、メンタルヘルス不調の予防など、様々なメリットがあります。
節酒
お酒の飲み過ぎは血圧上昇の原因となります。適度な飲酒を心がけましょう。
禁煙
交感神経活動の亢進、血管収縮、慢性的には動脈硬化が進行することで高血圧が進行します。
ストレスと血圧の関係
心理的・社会的ストレスによって高血圧の発症が2倍以上高まることが報告されています。
薬物療法
血圧が高くなるほど、生活習慣の改善のみで目標血圧に達することは困難になり、降圧薬による治療が必要となります。それぞれの方に対して、最も降圧効果が高く、基礎疾患等の病態に適した降圧薬を選択します。
カルシウム(Ca)拮抗薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、利尿薬、β遮断薬の5種類の主な降圧薬は、いずれも脳心血管病を抑制する効果が証明されています。
それぞれの積極的適応、禁忌や慎重投与となる病態があり、病態に応じた降圧薬を選択します。積極的適応がない場合の高血圧に対しては、最初にCa拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、利尿薬のなかから選択し、降圧が不十分の場合には併用療法を行います。
同一薬の増量よりも、異なるタイプの降圧薬を併用するほうが、血圧を下げる効果が大きいとされています。近年アンジオテンシン受容体拮抗薬など新たな薬剤も登場しておりますが、第一選択薬ではありません。血圧を下げる効果が高く、薬価も高くない薬剤から優先的に投与しております。
まとめ
高血圧は最も頻度の高い生活習慣病で、脳心血管病の原因となります。まずは、生活習慣の改善を行い、それでも血圧が改善しない場合には、内服での降圧治療が必要になります。
当院では、それぞれの方の年齢、病態によって適切な治療法を検討し、相談しながら治療を行っております。